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電子顕微鏡試料作製。後固定~脱水編。

ここでは、前回の前固定処理を行ったあとの工程について解説していきます。特にここでは有害物質であるオスミウムを扱うため、作業はゴム手袋、ゴーグルを着用し、ドラフターの中で作業を行ってください。

試料作製の流れ

工程は、以下のような大まかな流れとなっております。

  • 採取:観察対象となるサンプルを採取します。今回は身近なもので、道端に生えている雑草の葉を使います。
  • 前固定:単固定、二重固定。固定とは新鮮な組織を化学的に処理することで出来るだけ生きた状態に近く安定化し、乾燥処理の間に組織がひずまないような処理を行うことです。
  • 固定液の洗浄:単固定、二重固定ともに、最初に使用された固定液を洗い流す作業です。
  • 後固定:固定液を使用し、二回目の固定を行う作業です。
  • 洗浄:後固定で使用した溶液を洗い流す作業です。
  • 脱水:濃度の異なるエタノールを用意し、段階的にエタノール置換を行う作業です。
  • 置換:100%エタノールから100%t-ブチルアルコールへ置換を行う作業です。

このページでは、固定液の洗浄から脱水・置換までを解説します。

必要な器具・試薬類

器具類

ピンセット
エッペンドルフピペット(0.5~1㎖容量を扱えるものが便利です)
ビーカー(置換工程に応じて100㎖程度の容器を数個用意)
バイアル瓶
パラフィルム(容器の密閉のため)
ローター
ストップウォッチ

試薬・消耗品

蒸留水
4%オスミウム水溶液
エタノール
t-ブチルアルコール

固定液の洗浄


まずは固定液をピペットで吸い取り廃棄します。蒸留水を瓶に注入してローターにかけ、10分間回してください。
10分経過しましたらもう一度溶液を吸い取り廃棄し、蒸留水を注入して10分間ローターにかけます。

後固定


後固定では、1%~2%のオスミウム水溶液を使用します。今回は1%のオスミウム水溶液を作りたいと思います。
オスミウム水溶液は、結晶オスミウムを溶かして作る方法がありますが、現在は、4%オスミウム溶液が市販で販売されておりますので、それを利用したほうが手間が掛からずに安全です。

サンプルの入ったバイアル瓶に、エッペンドルフピペットで1.5㎖の蒸留水を入れます。
次に、エッペンドルフピペットで0.5㎖の4%オスミウム溶液を入れます。
これで、2㎖の1%オスミウム溶液が出来ます。

オスミウム固定には少しの時間が掛かります。
ローターにかけ90分待ちます。

後固定液の洗浄

オスミウム溶液は産業廃棄物扱いとなりますため、所属団体の担当部署へ廃棄方法について確認してください。
通常は、専用のガラス保存容器に貯めるところが多いようです。
作業はドラフト内で行います。

バイアル瓶からピペットで溶液を吸い出し、専用の廃棄用瓶に捨てます。

蒸留水を注入して5分間ローターにかけます。
5分経過後、再度、溶液を廃棄用の瓶に捨て、蒸留水を注入して5分間ローターにかけます。

脱水・置換

脱水は、サンプル中の水分をゆっくりとエタノールへと置換し、最終的に100%のt-ブタノールへと入れ替えていく作業です。
あらかじめ上昇系列の溶液を必要量準備しておきます。
必要量は、処理したいサンプルの40倍程度の量があれば十分です。

溶液の準備

準備する溶液は以下のように揃えておくのが一般的です。
50%、70%、80%、90%、95%、100% エタノール溶液をそれぞれ必要量に応じて準備しておきます。

次に、エタノールとt-ブチルアルコールの混合液を以下のように準備します。
100%エタノール + t-ブチルアルコール = 3:1
100%エタノール + t-ブチルアルコール = 2:2
100%エタノール + t-ブチルアルコール = 1:3

最後に100%t-ブタノールを準備しておきます。

弊社では、それぞれの割合となる溶液を100㎖程度づつ準備しストックしています。
各容器は吸湿防止のため、パラフィルムでフタを密閉致します。

脱水・置換作業

バイアル瓶の溶液を捨て、50%エタノール溶液を注入します。
ローターにかけ10分間回します。

順に、50%→70%→80%→90%と各10分ずつ脱水を行い、最後の95%は15分、100%は15分x2回、脱水処理を行います。

次に、凍結乾燥のためのt-ブタノール置換を行います。
まずは3:1の溶液を注入し、15分ローターで回します。
順番に、2:2を15分、1:3を15分、同様に行います。

最後に100%t-ブタノール置換を15分x2回行って置換作業は完了です。

次の工程へ

同日に、凍結乾燥装置による凍結乾燥を行う場合はそのまま作業を進めてください。
凍結乾燥を後日行う場合は、エタノールとt-ブチルアルコールの2:2溶液に漬けた状態で保管してください。
次回は凍結乾燥と載台、蒸着とSEM観察です。

補足説明

脱水・置換の工程では、サンプルによってはやり方を調整しなければなりません。この工程において、水分が十分に置換されていないと、凍結乾燥工程で試料の変形を生じ、良好な観察結果を得られません。
基本的にはこれまでに説明してきたスタンダードな方法で良好な結果が得られると思いますが、繊毛など組織の繊細さによってはデリケートな処理を行う必要がある場合もあります。
また、逆に植物の葉などは組織が丈夫なため、割と大雑把に処理を行っても観察結果に影響が無かったりする場合もあります。
ここには千差万別のノウハウが存在し、サンプルによってベストな方法は様々に試行錯誤していかなければなりません。

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